火山研究人材育成コンソーシアム構築事業

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インタビュー&レポート

受講生の声
次世代火山研究者育成プログラムに参加して


インタビュー&レポート
「他分野を学んだ経験が火山研究の視野を広げた」
/原田 智代さん(東京大学大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻 修士1年)

 本プログラムに参加して強く感じたことは、火山現象の捉え方が専門分野によって全く異なることです。私は普段、地球の岩石を研究している人たちと関わることが多く、火山を「地球内部での物質循環の中で地球深部の物質を表層にもたらす機構」として捉えてきました。一方、本プログラムを通じて、地球物理学では噴火現象に注目して火山を研究していることを学び、これまで自分が着目していた噴火の前段階だけでなく、それより先の噴火段階まで考える必要があると考えるようになりました。火山の下でマグマの組成変化などが起こっても、それが噴火しなければ地表にもたらされないですし、噴火の仕方によってマグマの噴出量なども変わってくるだろうと考えたためです。また、普段は研究室を含めて周囲に火山を研究対象としている人がいないため、このプログラムに参加すると、当たり前のように火山の話題を共有できることがとても楽しいです。次年度は本年度以上に本プログラムを受講し、研究の視野を広げていきたいです。

「座学だけでは得られない、貴重な学びの場」
/里和 玲伊さん(神戸大学大学院理学研究科 惑星学専攻 修士1年)

 私は普段、鹿児島湾南端にある阿多カルデラが形成された時期に噴出した火砕流堆積物について研究しています。本プログラムは、同じ火山現象でも研究分野によって見方が全く異なることを理解する貴重な機会となっています。例えば、草津白根山実習では温泉水から地球化学的に火山を分析できるアプローチに驚きましたし、原理をきちんと理解すれば基礎的な化学の知識で考えられることもわかりました。実は「地球化学は難しそう」と少し身構えていたところもあったのですが、座学だけでなく実際に自分の手で観測したからこそ、そこまで理解が深まったのだと思います。また、草津白根山は2017年9月に私たちが実習した後、2018年1月に何の前触れもなく噴火しました。火山の近くには人の営みがあり、一概に「危険だから非難してください」とは言いにくい現状があることも実習を通じて体感し、火山防災の難しさを改めて感じました。普段自分が触れていない火山や分野にも目を向ける機会を与えてくれる本プログラムのおかげで自分の知識が深まっていることを感じます。これからも積極的に参加し、幅広い知識を蓄積していきたいです。

「こんなに色々考えたり、知識を吸収することはなかった」
/手嶌 法子さん(九州大学大学院理学府 地球惑星科学専攻 修士1年)

 私は、天然に見られる火山現象の素過程を知るために、その代用品を用いて実験的に本質に迫る「アナログ実験」という方法を用いて、火山の中でも特に「間欠泉」という熱水活動を模擬し、そのメカニズムを地球物理学的に解明する研究をしています。ただ、室内実験で水を沸騰させる現象を見るだけでは火山についてわからないことがあると感じていた中、本プログラムに参加して、研究で大きなものを得ることができました。例えば、火山ガスの実習を通じて、私が普段の研究で見ている「発泡」という現象も、それを「火山ガス」で見るか「地殻変動」で見るかの違いであって結局は色々な分野で同じ現象を見ていると実感できたことが、本当に深く現象を知ることにつながると感じました。もし本プログラムに参加していなければ、正直、こんなに色々考えたり知識を得られたりしていなかったと思うくらい、吸収の仕方が全然違います(笑)。また、私たちが将来研究者になる頃には、他分野との連携がますます重要になると思うので、昔から知っている話しやすい仲で火山研究のコミュニティができていることも今後の大きな財産になると思います。これから私は博士課程に進学し、天然の火山の地震に研究を進めていきたいと考えているので、それを専門に研究している学生とも議論しながら、本プログラムで得た知識を活かし、研究をさらに発展させていきたいです。

「普段の環境だけでは得られなかった視野の広がり」
/小野 夏生さん(北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター 修士1年)

 私は、火山体を通過する地震波の速度の時間変化を捉えることで、火山活動の変化をモニタリングする研究を行っています。特に興味を持っているのが熱水系火山で、私が専門とする地球物理学的なアプローチのみならず、地質・岩石や火山ガスといった視点からも統合的に理解したいと思っていました。私が在籍している大学には地球化学を専門とする研究室がありませんが、本プログラムでは地球化学に関する日頃の疑問を専門家の先生方に直接ぶつけることができ、実習では実際に地球化学的な観測を基礎から学ぶことができるので、普段の環境ではなかなか得られない経験を積める貴重な場となっています。また、学会以外でも色々な大学の先生方や学生たちと会える機会が増えたので、研究について議論できる機会も増え、自分の考えが深まりました。さらに、本プログラムでは理学研究のみならず社会科学セミナーや行政へのインターンシップなど、防災の観点からも経験を積むことができます。現地の住民や行政の方など、避難する方側の視点を知ることができたことは、研究の視点だけで火山を見ていた自分にとって有意義な機会でした。将来は研究のみならず防災の観点からも火山研究の知見を伝えられる研究者になりたいです。

「同じ火山現象でも分野によって考え方が全然違う」
/石川 歩さん(東北大学大学院理学研究科 地球物理学専攻 修士1年)

 私は、火山体の傾斜の変化を観測することで噴火に伴う地下の圧力変化を推定する測地学的な研究をしています。本プログラムへの参加を通じて、私が専門とする地球物理学と隣接分野である岩石・地質学や地球化学では、同じ火山を対象としながらもその考え方やアプローチ、方向性などが異なることを理解することができました。例えば、初めて「軽石が出る噴火」と岩石・地質学の方から聞いた時は、同じ現象を地球物理学では「気泡流で噴出する」と捉えるので、分野によって現象に対する捉え方や用語の付け方がこれほど違うのかと驚きました。隣接分野に対する理解を感覚的に深めつつあることが、きっとこの先どこかで役に立つ場面が出てくると思います。私たちはこのようなプログラムを受けることができる非常に恵まれた世代だと思います。恵まれているからこそ、自分たちの好奇心やモチベーションを保ち、利用できるリソースは思う存分活用して、皆で刺激し合いながら、優秀な研究者になっていきたいです。

「隣接分野の結果に至るまでのプロセスを理解できる」
/不破 智志さん(北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター 修士1年)

 私は熊本地震の地殻変動について地球物理学の視点から研究をしており、これから火山現象に対する理解も深めていきたいと考え、本プログラムに参加しました。そもそも各専門分野の視点からわかることには限界がありますので、現象を深く理解するためには隣接分野の相互理解が今後ますます重要になると考えています。一方、現状としては隣接分野のことがよくわからないために地質・岩石学や地球化学の結果だけを引用して自分のモデルに当てはめがちですが、本来であれば、その結果が生まれるまでのプロセスを理解して初めて他分野の知見を自分の研究分野に活かすことができると思います。本プログラムで学べるのはまさにそのプロセスだと思いますので、その知識を自分も深めていきたいですし、将来研究者になることができれば、その知見をぜひ活かしたいと考えています。本プログラムで用意いただいている様々なコンテンツを自分のものにできるよう頑張ります。

「隣接分野への理解を深め火山防災にも貢献したい」
/池永 有弥さん(東京大学大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻 修士1年)

 私は地質・岩石学の視点から火山を研究しており、火山の地質については過去の噴火様式の推移をひとつの噴火に着目して調べ、岩石については岩石中に含まれる結晶の組成を調べることで、噴火前や噴火中の地下にあるマグマの挙動を研究しています。本プログラムでは、これまであまり学ぶ機会のなかった地球物理学を学んでいます。以前は学会などで地球物理学の研究発表を聞いても、その結果に至るまでのプロセスがよくわからなかったのですが、本プログラムでは基礎から教えてくださるので、最近は地球物理学の発表を聞いても理解できる場面が増えてきました。また、そもそも火山を研究している人自体が多くないため、本プログラムで火山を研究している先生方や学生たちが集い刺激し合える関係性を築けている点も非常によいと思います。さらに、自分の研究は将来防災にも貢献できるテーマだと思いますが、自分の専門分野でできる範囲は限られていますので、防災の観点でも隣接分野の力を借りる場面が出てくると思います。本プログラムで隣接分野に対する理解をこれからも深めながら、将来は火山防災にも貢献できれば嬉しいです。

(学生の所属・学年は平成30年3月時点のものです)