長崎県の島原半島に位置する雲仙地獄において、火山化学に関する火山ガスの計測・調査技術を活火山の現場で学んでもらうため、平成30年10月28日から31日までの4日間、雲仙フィールド実習を行いました。実習には本コンソーシアムに参画する全国5の大学から地球物理学や地質・岩石学を専攻する大学院生(修士・博士課程)7名と教員3名が参加しました。
島原半島の西側に位置する小浜の宿泊地に到着後、10月28日の夕方より篠原宏志首席研究員(産業技術総合研究所)による火山ガス観測に関する講義が行われました。火山ガスの起源や組成、観測手法について解説し、特に2日目以降の実習で使用する携帯型ガス観測マルチセンサー「Multi-GAS」について原理などを詳しく説明しました。
10月29日午前は、篠原首席研究員、森田雅明研究員(産業技術総合研究所)の指導の下、観測で使用するMulti-GASという装置の校正作業を行いました。この装置は、ガスセンサー群やポンプなどをコンパクトにまとめたもので、火口や噴気孔から流れてきた噴煙内で多成分の濃度を測定することができます。Multi-GASの内部構造や使用方法についての説明を受けた後、標準ガスを使用して校正を行いました。
午後は、雲仙岳の西側中腹に位置する雲仙地獄に移動し、噴気地帯でMulti-GASを用いた観測を実施しました。受講生は2グループに分かれ、噴気地帯の様々な地点から噴出する噴気に接近し、噴気に含まれる二酸化炭素、二酸化硫黄、硫化水素、水、水素のガス濃度をMulti-GASで測定しました。また、噴気試料を直接採取する方法を篠原首席研究員が実演し、受講生は貴重な観測風景を見学することができました。
10月30日午前は、前日までに観測した噴気組成データの解析を行いました。組成の時間変動の特徴や組成比の観測地点による違いなどを精査し、雲仙地獄における火山ガスの起源について、グループごとに議論を行いました。
10月30日午後は、実習内容をまとめた発表会を行いました。観測グループごとに実習の成果を口頭発表し、グループ間のデータの比較など、発表に対して活発な質疑応答が交わされました。最後に教員たちによる講評が行われました。
最終日の10月31日は、小浜から島原半島の東側の島原市に移動し、雲仙岳噴火に関連する巡検を行いました。雲仙岳では、1991-1995年にかけて、溶岩ドーム(平成新山)の噴出とその崩落による火砕流やその後の土石流によって甚大な被害を及ぼす噴火が発生しました。巡検では、旧大野木場小学校被災校舎、雲仙岳災害記念館、土石流被災家屋保存公園などを見学しました。